●女性建築家ならではの視点がいっぱい
親は仕事、子どもは部活や塾やアルバイトで忙しく、家族がともに過ごす時間が減ってきている。まともに顔を合わせて話をするのは、食卓を囲んだときぐらい。家族のコミュニケーションの場となるのは、リビングよりもむしろダイニングやキッチンである。
著者の女性建築士たちは、最近の施主がキッチン&ダイニングに求めるレベルの高さを実感している。夫婦で料理をしたい、子どもと一緒にケーキを焼きたい、友人を呼んでパーティーを開きたい、オーガニック野菜の洗い場がほしい……などなど、ニーズが多様化している。
本書は、「施主との丁寧な話し合い」をモットーとして「住む人の暮らし方に合わせた住まい」を作る女性建築士たちが、これまでに手がけたダイニング・キッチンの事例を多数紹介している。自らも働きながら子どもを育ててきた身で、毎日キッチンに立っている女性たちならではの、細やかな設計プランに注目!
家族の食事時間がバラバラですれ違いの多いSさん宅は、LDKを大きな吹き抜け空間にして、ここから家全体を見渡せる構造に。
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●使えるアイディアがいっぱい
▲北側の陽当たりの悪いキッチンには天窓と広いコーナー窓を設けて光を入れる。朝、一人で朝食の準備をするという母親のために、コーナー窓に隣の庭を借景するという心配り。
▲立ち作業をするキッチンと床座のダイニングとの間で目線の高さが変わらないように、キッチンを半階分低くする工夫。
▲フルオープンでシンクもコンロも丸見えのキッチンは、汚れや散らかりがダイニングから目立たないよう、カウンターの奥行きを広くとってシンク下を物置きスペースに。
▲食事のたびに机の上の物をいちいち片付けなくてすむように、ダイニングの脇に「家族図書室」を作ってしまうという発想……。
今、キッチン&ダイニングは“家族蘇生の場”として、さまざまなプランが提案されている。本書はそのトレンドを具体的に紹介している。
共働きで忙しく、子どもと過ごせる時間が短いNさん宅。母親がキッチンに立ったとき、子どもが腰掛けてお母さんに話しかけることができるキッチン前階段を用意。
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