時代の節目をむかえて。
七つ森書館
今年は敗戦後60年です。ヒロシマ・ナガサキの被爆から60年、沖縄戦から60年、東京をはじめ各地の大空襲から60年を迎えます。来年は日本国憲法公布から60年です。戦後の民主主義からうまれた団体のなかには60年を迎えるところも多いことでしょう。
9.11以降イラク戦争にいたるプロセスは、世界中の民衆の非戦の意思表示を圧殺するものでありました。昨年、イラクでの日本人人質事件で突きつけられた“自己責任論”は、深く影を落としています。また、自衛隊派兵延長を巡る議論で、日本の首相が放った「自衛隊のいるところが非戦闘地域である」という暴言は、大量破壊兵器が発見されないにもかかわらずイラクに戦争をしかけて占領を続ける米国の大統領の行為と表裏をなしています。このようなことがまかり通る世界で、1年経った日の今日、何を考えているだろう、私たちは何をしているだろう……、危機意識がめばえてきます。
今年から来年にかけて、時代の大きな節目を迎えるのは確かなことなのですが、モヤモヤした感触にとらわれています。このモヤモヤ感を「何かをする」という考えに、つないでいきたいと思います。
七つ森書館には、この時に執筆している著者の方々がいます。年初にはまず、珠洲原発計画を断念させるまでを記録した『珠洲原発阻止へのあゆみ』(北野進)を出版し、続いてヒロシマ・ナガサキ被爆60年出版として『核問題ハンドブック』(和田長久・原水禁編)を出版しました。
“60年”を機にこれから出版する本の書名を列挙してみましょう(仮題を含みます)。
○『原爆絵本リトルボーイとファットマン』(マッド・アマノ)
○『戦争はペテンだ―バトラー将軍にみる沖縄と日米地位協定』(吉田健正)
○『僕のヒロシマノート』(木原省治)
○『はだしのゲンとチェルノブイリの祈り』(神田香織)
関連するジャンルの本としては、
○『JCO臨界事故最終報告書』(JCO臨界事故総合評価会議)
○『フォトルポルタージュ 子どもたちの生きる世界』(豊田直巳)
このようなラインナップですが、テーマは、ヒロシマ・ナガサキ、沖縄、戦争、JCO臨界事故、チェルノブイリなどです。
話は前後しますが、七つ森書館は昨年出版点数が100点をこえ、今年は創立20年を迎えます。はやい歩みとは言えませんが、創立10年を記念して刊行した『原子力市民年鑑』は10冊目を数えます。また、高木仁三郎さんが亡くなってから5年が経ちます。5年以内の完結をめざした『高木仁三郎著作集』は、たくさんの方の支援を受けて昨年完結しました。
戦争・原爆・核の問題をひとつながりのテーマとして考えていくこと―この時代に21年目を迎える私たち七つ森書館はこのようなプロジェクトをつづけていきます。そして、暮らしの中で生かしていくことをめざしたい。3月初めに出版した『暗闇のなかの希望』(レベッカ・ソルニット)の言葉を引用して結びとしましょう.
「それは、ある種のはじまり、しだいに認識できるように
なってきたが、まだ名前もなく、認知もされていないなにか
―希望の新しい地平―のはじまりなのだ」
(代表取締役 中里英章)
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