2005.08.29.up


 要塞都市を揺るがす「音の力」
     
酒井隆史(DeMusik Inter.)

 うたをめぐる天王寺の階級闘争(カラオケ屋台争議)についてフィールドワーカーと映画監督による現場報告から口火を切り、釜ヶ崎で生まれ天王寺公園で育ち、すでに大阪ミナミから火の手をあげる、とぼけて熱いラッパー、シンゴ☆西成のインタビュー、韻踏合組合を脱退後、般若心経をラップするプロデューサー・アミダと、大阪を代表するラッパー・イルリメの対話。今回の『音の力〈ストリート〉占拠編』は、大阪ディープサウスから出発し、そしてサウンドとデモの街頭における祝祭的融合へ。渋谷での「STREET RAVE AGAINST WAR」にはじまる一連の東京サウンドデモ、路上解放☆道頓堀ぐるぐるデモ、アメ村右往左往、京都・反戦デモンストレーション解放どすぇ(!?)など関西サウンドデモのDJやオーガナイザーによる対談、いつのまにか消された法政学館の記憶を刻み、前編でも焦点となった神戸の苦闘と希望でとどめを刺す。日本のみならずニューヨーク、北京へ、と、路上にあふれでる音に導かれて、いつもにまして縦横無尽。「もう私たちは勝手にやります」(東琢磨)。なにかやろうとすると冷笑と罵声のとび交うこの最悪の日本のメジャーな舞台を降りて、「勝手にやる」人が増えている。「実効性」無用!「勝手にやる」人たちの「勝手な」ものの方が絶対おもしろい。これは時代の底の方でふつふつと進んでいるひそかな転回の重大な記録ではないか!?

酒井隆史(さかい・たかし)社会学・社会思想。
著書に『自由論』(青土社)、『暴力の哲学』(河出書房新社)、 訳書にアントニオ・ネグリ+マイケル・ハート『〈帝国〉』(以文社)など。共著も多数。

7月新刊・発売中
インパクト出版会
音の力〈ストリート〉占拠編 
DeMusik Inter.[編]
ISBN4-7554-0147-X
A5判並製/320頁
2500円+税

予定調和を拒否する圧倒的なサウンド。大資本が席巻する都市の隙間に瞬間的に立ち現れ、ストリートを情動で埋めつくす音の力――カラオケ屋台撤去や「法政大学学館ホール」解体など、自律的な音楽空間が消される一方、9.11〜イラク攻撃以降日本各地で勃発した反戦サウンドデモに代表される新たな試みが各地で行われている。10年目を迎えた被災地・神戸での市役所前占拠ライブイベント、愛知・岡崎発パンクスたちによる野外フリーライブなど消し去られた街のノイズを、匂いを、路上のコンフリクトを顕在化する試みの数々、大阪OCATのストリート・ダンサーや、東京を暗躍するグラフィティライターたちへのインタビューなどヒップホップカルチャーをめぐる貴重なレポートが満載。『音の力 ストリートをとりもどせ』での〈路上の音楽〉〜チンドン再興、前号『音の力〈ストリート〉復興編』での地方発アンダーグラウンド、公共図書館でのフリーコンサート、三池炭坑跡活性化の試み、フォークゲリラ再考などにひきつづき、アクティヴィズムとしての音楽、〈ストリート〉=街路の可能性について総特集する。


    【音の力とアクティヴィズム】NR関連書 


音の力〈ストリート〉復興編
インパクト出版会/2200円+税

音の力 ストリートをとりもどせ
インパクト出版会/2500円+税

音の力 カルチュラル・スタディーズ
インパクト出版会/2200円+税

音の力〈沖縄〉コザ沸騰篇
インパクト出版会/2500円+税

音の力〈沖縄〉奄美/八重山/逆流篇
インパクト出版会/2200円+税

ビートルズの研究 ポピュラー音楽と社会
日本経済評論社/2500円+税

DJカルチャー
三元社/2200円+税

セカンド・ステージ
同時代社/1500円+税

カルチャー・クラッシュ
社会評論社/2200円+税

熱帯の祭りと宴
柘植書房新社/2300円+税


 

NR出版会サイト┃トップ新刊重版情報既刊書籍リスト加盟社リンクNR-memo書評再録

Copyright(c) NR出版会. All rights reserved.