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玉川信明セレクション■日本アウトロー烈傳
(れつでん)


大正・昭和という時代の中で、とりわけひたむきに自らの人生と向き合った「アウトロー」たちがいました。ときに成功を味わいながら、ときに挫折を味わう。そんな彼らを周囲の目はどうとらえたのか? また、現在にいたってはどうなのか? 

玉川信明(1930-2005)氏の多くの著作から、とくに「アウトロー」を描いた5作品を、再編集し刊行します。


第1巻は、著者の出発点であり代表作である『評伝 辻潤(つじじゅん)』の増補版。多くの人をひきつける辻潤の〈ことば〉を読者に紹介する本書には、単純な伝記に終わらない熱意がこめられています。その後の著者の著述活動に大きく作用する原点をまずはお愉しみください。

第2巻は、1920年代のフランス・パリに渡ったジャーナリスト・松尾邦之助(まつおくにのすけ)が出会う日本人たちの交流から物語が始まります。次第に後年の松尾と著者との対話に軸が移り、晩年に松尾が書き残そうとした1冊の本が謎として現れます。

第3巻は、富山の薬売り(配置売薬人)の歴史を江戸から昭和までたどる、本シリーズのなかで異色の作品です。全国を漂流する薬売りの姿に見えかくれするのは、明治にいたり様変わりする日本の国のあり方です。ひとつの文化が変容されてゆく流れに歴史の影を感じさせます。

第4巻は、ヤマギシ会の創始者・山岸巳代蔵(やまぎしみよぞう)の評伝。晩年の妻・ニワへのインタビューを収める本書は、禅とアナキズムを語ることで、山岸巳代蔵という人物像を巧みに創りあげます。第1巻の「辻潤」とは違ったトーンが興味深い本格評伝です。

第5巻は、大正時代に華を咲かせたアウトローたちを取り上げる作品集。過去2つの作品から再構成し、1冊にまとめました。所々でふいに顔を出す大杉栄たちの姿をたどってもおもしろい内容。大正の浅草や大阪に現れた表現者・活動家たちの顔ぶれは一読の価値があります。


本シリーズはいずれも「評伝」という表現スタイルをとります。あまり馴染みのうすい人物群が題材ではありますが、かえってそこに読んでいて愉しめる秘密があるのではないでしょうか。単に生涯を追うだけではないこれらの評伝には、読者に語りかける〈生きること〉へのひたむきな姿勢の著者がいます。
それは、著者は自身の一連の著作を「憤書(ふんしょ)」と名付けていたことにヒントがありそうです。はたして何に対して憤っていたのか? ぜひ読者の方々に考えていただきたく思います。
セレクション化にあたり、そうした作風をできるだけお伝えできるよう配慮いたしました。どうぞ一冊でも多く愉しんでいただけることを願ってやみません。

社会評論社



|各卷の紹介|


放浪のダダイスト辻潤 
(2005年10月刊)


エコール・ド・パリの日本人野郎 
  (2005年11月刊)


反魂丹の文化史 
(2005年12月刊)


評伝 山岸巳代蔵 
(2006年1月刊)


大正アウトロー奇譚
(2006年2月刊)





第5巻[ 大正アウトロー奇譚 わが夢はリバータリアン ]
定価:本体3,200円+税
ISBN4-7845-0565-2


大正時代(1912-25)は、第1次世界大戦、ロシア革命、米騒動そして関東大震災と、国内外で次々に歴史的体験をする。抵抗から生まれた演歌、浅草オペラ・映画人、混血の戯作者、労働者作家、ポルノ出版、南蛮学、浪華の社会運動家─。大正アウトローたちが時代を駆ける。
本書は1977、78年作品の再編集版。多彩な人物評伝を愉しみながら、著者が意図した大正時代の猛烈な雰囲気をぞんぶんに味わってほしい。


第4巻[評伝 山岸巳代蔵 ニワトリ共同体の実顕社]
定価:本体3,400円+税
ISBN4-7845-0564-4


『放浪のダダイスト辻潤』につづき、著者が本格的に取り組んだ評伝。ヤマギシ会の創始者・山岸巳代蔵を描いた。山岸会事件はもちろん、晩年の山岸に欠かせない、妻・福里ニワへの取材をもりこんだ貴重な作品である。オリジナル(1979年作品)を再編集し、巻末に「日本の中のユートピア」を補足収録する。



第3巻[反魂丹の文化史 越中富山の薬売り]
定価:本体3,000円+税
ISBN4-7845-0563-6


漂泊の薬売り──。
著者の故郷、富山の薬売り(配置売薬人)の文化史。全国津々浦々を歩き巡る旅人=薬売りたちの直の声に耳を傾けながら、江戸時代から昭和までを再構築する。時代の流れは、ひとつの文化をどのように変貌させたのだろうか?
オリジナル(1979年作品)の写真図版はそのまま再現し、講演記録「富山の薬売りと文化の先達者」を新たに収録した。


第2巻[エコール・ド・パリの日本人野郎 松尾邦之助交友録]
定価:本体3,200円+税
ISBN4-7845-062-8

大正は先見していた──。
1920年代、芸術の都パリ。その〈文化人税関〉といわしめた松尾邦之助を主役に、藤田嗣治、武林無想庵、石黒敬七、辻潤、金子光晴たちとの交流を描き、次第に後年の松尾本人と著者との対話に軸をうつしてゆく。あぶりだされる〈日本〉の姿とは?
本書にはオリジナル(1989年作品)に加え、「パリのコスモポリタン・松尾邦之助」「回想・松尾さん時代の『個の会』」の2篇を収録する。



第1巻[放浪のダダイスト辻潤 俺は真性唯一者である]
定価:本体4,300円+税
ISBN4-7845-0561-X

本書は玉川氏の代表作『評伝辻潤』(1971年作品)に「補遺 辻潤を知って生きられたわが生」を収めた決定版。大正から昭和にかけて生きた“創造的ニヒリスト”、“無類のオリジナリスト”辻潤の軌跡。彼の〈ことば〉は現代に未だ新しく、著者はそれを存分に紹介する。
遠きに生きた〈アウトロー〉の姿は、現代においても〈アウトロー〉のままなのか? 世代を問わずひろく読み継がれたい作品。




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