《自律と不屈のために》
同時代社最新刊のご案内
12月に発行された2点の新刊について、
発行者としての補足的な説明をさせていただきます。
大杉栄×山川均『アナ・ボル論争』
大窪一志/編・解説 宮崎学/特別寄稿
四六判並製370頁 13級 定価〔本体3500円+税〕
「なんで今さらアナ・ボルなの?」たしかにそうです。今から80年余前に行われた大杉栄と山川均の論争をどうして取り上げたのか。じつは私としては、かなり入れ込んでの企画でした。
それは、昨今の時代状況を見たときに感じる問題意識から生まれたものでした。なぜ「左翼」が全体として「こんなことになってしまった」のか――という意識です。その謎を解くカギがあの論争にあったということを言いたいわけではありません。そうではなくて「こんなことになってしまった」ということの意味と、ではそのあとで私たちは何から始めるべきなのかということについて、もう一度考え直したいと思ったからでした。できれば読者のみなさまと一緒に。
本書の編者・解説者の大窪一志さんは1960年代以来の私の若い友人で、彼からはこれまでも多くのことを教えてもらってきました。彼は本書の中で「日本の左翼運動は1990年代前半にほぼ壊滅した」といいます。そしてつづけます。「それは、1890年代末以来100年余を貫いて運動してきた一塊の思想群が、その展開をし終えたということである。そして、そのものが展開しきったときこそが、そのものの本質を明確に把握しうるようになったときなのである。ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つのである」と。
終局の中に始原があり、始原のなかに終局があるとするならば、1922年の「論争」の中に「いま」を予感させるさまざまな要素が見えるはずであり、そして、終局としての「いま」の中に孕まれている新しい始原の姿が発見できるのではないか。じっさい、日本左翼の出発点であったアナ・ボル論争の中には、ほぼ100年を経たのちにその終焉をもたらすさまざまな要因が浮上しているように思われるのです。
私もこれを機会にアナ・ボル論争の全論文に目を通すことになりました。自然成長か目的意識か、外側からか内側からか、人間の解放か国家の革命か、指導性か自発性か、かつて私たちが馴染んだ、そしてとっくに「卒業した」と思っていたテーゼが、いま、全く新しい視点で眺められることを発見しました。これは意外な驚きでした。
斎藤貴男『人間選別工場―新たな高校格差社会』
四六判並製208頁 13級 定価〔本体1500円+税〕
斎藤貴男氏久々の書き下ろしです。
ジャーナリストたち、とりわけ若手の人たちの間で、時代に対する批判精神が急速に衰えていくなかで、斎藤氏は歯に衣着せぬ率直な方法でこの趨勢に戦いを挑んでいるように思われます。たまたま同時代社編集部の高井君が、斎藤氏の出身高校(都立北園高校)のはるか後輩にあたるという縁でこの企画は始まりました。二人で同校を訪ねて座談会を開くなど、本書には丹念な取材の裏付けがあります。
『機会不平等』『安心のファシズム』『カルト資本主義』など問題作を次々に放ってきた氏の最新作に乞うご期待です。とりわけ、本書では、氏が自分の中学・高校時代の体験を率直に語りつつ、若い人たちへの「語りかけ」を収録しました。私たちの世代にとっても傾聴すべき「語り」が含まれているように思います。
(同時代社 川上 徹)
《自律と不屈のために》NRセレクション
未完の沖縄闘争
新崎盛暉 ¥3800 凱風社
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未完の「多摩共和国」
佐藤文明 ¥2500 凱風社
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監視社会とプライバシー
斎藤貴男他 ¥1500 インパクト出版会
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路上に自由を
斎藤貴男他 ¥1900 インパクト出版会
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こんな国はいらない!
鎌田慧 ¥1600 七つ森書館
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時代を刻む精神
鎌田慧 ¥2000 七つ森書館
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百姓が時代を創る
山下惣一、大野和興 ¥1800 七つ森書館
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「あふれる愛」を継いで
土志田勇 ¥1800 七つ森書館
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自律と協働、はたらきがいをもとめて
鎌田慧 ¥1800 七つ森書館
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自由に生きる
ルーブナ・メリアンヌ/著、堀田一陽/訳 ¥2000 社会評論社
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フジサンケイ帝国の内乱
松沢弘 ¥1800 社会評論社
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甦れ! 労働組合
四茂野修 ¥1700 社会評論社
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社会主義はなぜ大切か
村岡到 ¥2400 社会評論社
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挑戦するアメリカ高齢者パワー
宮本倫好 ¥2200 亜紀書房
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四国トンネルじん肺訴訟
四国トンネルじん肺訴訟徳島弁護団/編著 ¥2000 亜紀書房
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作文集 泣くものか
全社協養護施設協議会 ¥1400 亜紀書房
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作文集 続・泣くものか
全社協養護施設協議会 ¥1400 亜紀書房
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カリフォルニア移民物語
佐渡拓平 ¥2800 亜紀書房