2006.02.21.up

亜紀書房の強力新刊
   マルクスに誘われて
           みずみずしい思想を追う
        
『資本論』がちんぷんかんぷんでも マルクスは十分におもしろい ――著者が実証ずみ


的場昭弘(神奈川大学教授)

 とかく哲学の解説本というと、難解な理論を難解に解いて終わりとするか、あまりにも我田引水で解釈して、実体から離れてしまうようなものが多い。つねに読者は消化不良のまま、また次の新潮流の哲学者の解説書に向かうことになる。いわくレヴィナス、いわくアドルノ、いわくスピノザ、といったように。

 本書の著者が、この本の〈ねらい〉を実に的確に、次のように表現している。
 「本書はむしろマルクスについて語るのではなく、なぜマルクスを学ぶ魅力があるのかを語る書物である。だから私自身が全面的に出てこざるをえない。半ば自伝のように自分の過去を振り返りながら、マルクスとの係わり合い、いやマルクスをこう読む私の立場を理解してもらうことを念頭においている。その意味で私の趣向が全面に出すぎる可能性がある。問題は趣向の問題ではないのだが、かといってそれを抜きにしたのでは、マルクスをやることの面白さなどは半減するだろう」      〈序章より〉

 著者は勉強好きの学校嫌い、小学校は4校、中学が2校、高校が3校、大学の受験に失敗し、大学院も最初の試験で不合格、マルクス、それも社会思想史という最も食えない分野を専攻したがために就職口がなく、留学先で出版の可能性のない原稿を書き続け、帰国して最初に就いた仕事が図書館員。それでも「格好つけるわけではないが、飯を食うために研究しているのではない」と言う。マルクスをやることが楽しい、それが著者がマルクスを追い続ける秘密である。

 人の思索は、主に出会った人と読んだ本で深化する。つまり〈自分史〉を追うことが、そのままマルクスをめぐる思索の深まりや広がりとなる。ゆえに本書は読みやすく、しかもマルクス入門としては実に最適なつくりとなっている。

 さらに、『ニーチェにだまされて』『ハイデガーに煙に巻かれて』などの続刊も考慮中。乞うご期待!

       

亜紀書房 2月10日(金)配本

マルクスに誘われて
みずみずしい思想を追う
      的場昭弘

四六判、並製、264頁
定価:本体1,800円+税
ISBN4-7505-0602-8

NRマルクス・コレクション

コンテンポラリィ・マルクス
M・マルコヴィッチ ¥2,330+税 ISBN4-7505-9520-9
亜紀書房

エルネスト・マンデル
ミシェル・レビィ ¥3,500+税 ISBN4-8068-0436-3
柘植書房新社

資本主義経済の原理
岩田 弘 ¥2,000+税 ISBN4-8331-4011-X
風媒社

レボルツィオーン 再生の歴史哲学
グスタフ・ランダウアー/著、大窪一志/訳 ¥2,900+税 ISBN4-88683-538-4
同時代社

アナ・ボル論争〈再見〉
山川均・大杉栄/著、大窪一志・宮崎学/解説 ¥3,500+税 ISBN4-88683-565-1
同時代社

マルクスと哲学 方法としてのマルクス再読
田畑 稔 ¥4,500+税 ISBN4-7877-0400-1
新泉社

マルクスとアソシエーション
田畑 稔 ¥2,500+税 ISBN4-7877-9407-8
新泉社

マルクスの〈空想的〉社会主義
牧野紀之 ¥2,800+税 ISBN4-8460-0305-1
論創社

ポスト・マルクス主義の政治理論
佐治孝夫 ¥3,000+税 ISBN4-8460-0389-2
論創社

社会主義はなぜ大切か
村岡 到 ¥2,400+税 ISBN4-7845-1450-3
社会評論社

アソシエーション革命へ
田畑 稔他 ¥2,800+税 ISBN4-7845-1419-8
社会評論社


 

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