新泉社　日本全国を歩いて作った「自然派ガイドブック」

　
2006.07.27.up

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●松井一恵（ウォークライター） 　2004年秋、ゴールははるかかなたの気が遠くなるような旅する仕事がスタートしました。「おいしいごはんの店」はごはんを食べる取材だから、昼と夜に１日２店。その合間に「やさしいくらしの店」を訪ねるというリズムでめぐりました。ごはんは、お客さんとして注文して、夜の取材ならば（時には昼も）ビールやワインも飲みながら食事を満喫。イラストはすべて取材者が食べたメニューというわけです。ショップでも取材後はお客さんに早変わり。ちゃんと食べて、必要なものを買う。そうすることで消費者の感覚を大切にできたと思います。スローな取材旅だと思われそうですが、じつはつねにドタバタ。でも、訪ねるお店の時間はゆっくりしていて、ていねいな仕事がある。新幹線や飛行機で移動している忙しい自分が恥ずかしくなったりしながら、訪ねる先々で暮らしや人生を見つめ直すきっかけをたくさんもらいました。できあがった本は、登場するお店と同じく大きなコマーシャリズムとは無縁です。でも、人から人へじわっと輪が広がって、本物の出会いが待っていて、その出会いが日本の農業や未来を明るくする力になると信じています。図書館では『おいしいごはんの店』は「596.0」、『やさしいくらしの店』は「673.7」に分類されることでしょう。でも、ぜひ２冊並べて置いていただきたい。単なるお店紹介のガイドブックではなく、たとえば意外な共通項として、これからお店を開きたいと思っている人に役立つ本でもあります。

●石渡希和子（イラストライター） 　日本全国を取材しました。最短アクセスを探し、きちんと調べて行くにもかかわらず、そのとおりにはなりません。あるはずのバスがない、雪で電車が止まる、徒歩20分はじつは40分……。楽しいけれど大変なアクシデントとの二人三脚。たどりつくと、お店の方が「わざわざよく来たねー」とあきれていました。インターネットでなんでも居ながらに調べられる時代。ちょっとネットで見て、ささっと書けば、ガイドブックなんて簡単に作ることもできます。それを、駅から40分歩いてやってきた東京人。車じゃないの？　しかも、お店ごとにイラストを描くの？　あきれる店主さんはやがて、「うちも、手間ばかりかかって儲からない商売をやってるよ。同じだね」と苦笑します。安全な食材で手をかけた料理を作る、愛情を注いで育てた野菜を売る、自然を汚さない石鹸を売る、公正な取り引きで世界から買った商品を売る、そんな人たちと、本を作る私たちが、共感をもってつながれたことが嬉しいと思います。手間ばかりかかって儲からないけど、それをやらずにはいられない同士として。先日、あるレストランの店主さんが、本に載っていた他のお店に食べに行ってみたと知らせてくれました。「ごはんの本の○ページに載ってる○○です」と自己紹介したそうです。「みなさんがんばってますね。刺激を受けました。また別のお店にも行ってみます」と。お店同士のそんな交流も嬉しくなります。すべてが大切な宝物のような仕事でした。

【書店・図書館のみなさまへ】

　昨年から今年にかけ、『おいしいごはんの店』『やさしいくらしの店』という２冊の本を世に送り出しました。いずれも、オーガニック、ナチュラル、スローフード、手作り、地産地消、フェアトレードといったテーマで、全国47都道府県それぞれの地域で営業している自然派のお店を紹介したガイドブックです。
　この２冊の本は、数人のライターと編集者が手分けして掲載店すべてに足を運び、お店のことばに耳を傾け、じっくりと見てふれて作ったものです。取材の中心メンバーであったお２人のライターさんのことばを、ぜひ読者のみなさまにお届けください。（新泉社内、野草社編集部）