2007.04.14.up



ベリタ1号
ベリタ編集部/編
ISBN978-4-8068-0551-9
定価1,200円+税
柘植書房新社

ネットニュースメディアが紙媒体の雑誌に
ユニークな新雑誌
「ベリタ」

 2002年6月に日本初の独立系インターネット新聞として創刊された「日刊ベリタ」の存在感は徐々にではあるが、確実に大きくなってきている。オールタナティブ・メディアとしてのベリタの記事はユニークで、特に国際ニュースがおもしろい。

 私自身、共同通信の外信部という国際ニュースを扱う部門で長年仕事をしてきたが、不思議に思うのは、共同通信が発する国際ニュースとベリタが報じる国際ニュースがほとんど重なっていないことだ。ベリタの国際ニュースの多くは(国内ニュースもそうだが)、大手メディアがまったく取り上げていないニュースが実に多い。

 ベリタの特徴は「国際社会面」とでも言うべき各国の社会、事件が詳細に報じられていること、南太平洋やアフリカ諸国など、大手メディアが「手薄い」地域の報道が充実していること。ニュースの切り口も違う。

 ベリタの報道を読むと、国際ニュースは、各国の政治ニュースに偏りすぎなのではないかという反省を感じる。

 共同通信が配信する国際ニュースの中心は、各国の政治家の発言、首脳会議、選挙などの政治状況、それに大事故や大災害などのニュースなどがほとんどだ。メディアに期待される国際ニュースの需要を考えると、政治偏重も致し方ない面はあるが、新聞の読者からは「新聞が報じる国際ニュースは硬い」「分かりにくい、なじみにくい」といった指摘もよく聞く。その点、「世界も日本も多様なんだ」というキャッチフレーズともにベリタが報じるニュースは視点が多様でカラフル、記事の選択も独自性も高い。一般読者だけでなく「メディア業界関係の読者が非常に多い」(永井浩ベリタ編集長)というのもうなずける。新聞には載っていない格好の企画ネタなどがベリタの報道の中に豊富にあるからだ。

 今回、新たに創刊した雑誌(書籍扱い)「ベリタ」は、ネット上に掲載された記事の中から、読者のアクセスが多かった記事などを中心に厳選し、紙媒体に再収録したものだ。紙媒体のメディアがネットに進出する話は昨今、いくらでもあるが、ネット・ニュース・メディアを紙媒体の定期刊行物として刊行するのは、おそらく日本で初めての試みだろう。

 創刊号の編集後記には創刊の理由として次のような言葉がある。

 「ネットメディアを知れば知るほど、新聞や雑誌、本などポータブルで手ごたえのある紙媒体の価値がそう簡単には崩れないことを、あらためて痛感してるがゆえだ。『ネット時代を予言した』と現在評価されているカナダの社会学者マクルーハンは、新聞について『記事は不幸や悲しみを広告は幸福を伝える』と評した。ビジュアル性、一覧性にすぐれた手に取れる紙面としてのメディアは『書かれてあること』そのものとはまた、別の価値や意味を時に持つ。」

 確かにネットでベリタを読み続けてきた者として、紙媒体となったベリタにはまた別の手応えがある。創刊号の北朝鮮特集、安倍政権特集などは読み応えがあり、地域トピックスなど情報量は非常に豊富だ。

 当面、雑誌(書籍扱い)ベリタは隔月刊で刊行とのことだが、月刊化も視野に入れているとのころ。日本の月刊誌、隔月刊誌の多くは論壇誌的なものが多く、以外にファクト中心の雑誌は少ない。ネット上の日刊ベリタと紙媒体の雑誌ベリタのコラボレーションが、新たな「化学反応」を起こす可能性に期待している。

NR関連書「NRが発信する、世界の今」

 ユーゴ内戦後の女たち その闘いと学び
ドラガナ・ポポヴィッチ他 2,000円+税 ISBN978-4-8068-0523-6
柘植書房新社


 ユーゴスラヴィア民族浄化のためのレイプ
ベヴェリー・アレン 1,700円+税 ISBN978-4-8068-0454-3
柘植書房新社


 シャヒード、100の命  パレスチナで生きて死ぬこと
アーディラ・ラーイディ 2,000円+税 ISBN978-4-7554-8008-9
インパクト出版会


 クルディスタンを訪ねて トルコに暮らす国なき民
松浦範子/文・写真 2,300円+税 ISBN978-4-7877-0300-2
新泉社


 ネパールに生きる 揺れる王国の人びと
八木澤高明/写真・文 2,300円+税 ISBN978-4-7877-0412-2
新泉社


 王国を揺るがした60日 1050人の証言・ネパール民主化闘争
小倉清子 2,800円+税 ISBN978-4-7505-9916-8
亜紀書房


 今日も病院に銃弾の雨が降る クルディスタンはちゃめちゃ医療奮闘記
鈴木崇生 1,800円+税 ISBN978-4-7505-9915-1
亜紀書房


 匿されしアジア ビデオジャーナリストの現場から
アジアプレス・インターナショナル/編著 2,000円+税 ISBN978-4-8331-1045-7
風媒社


 アジアの傷・アジアの癒し
アジアプレス・インターナショナル/編著 2,400円+税 ISBN978-4-8331-1055-6
風媒社


 入門ナガランド インド北東部と先住民を知るために
多良俊照 2,000円+税 ISBN978-4-7845-0376-6
社会評論社


 自由に生きる  フランスを揺るがすムスリムの女たち
ルーブナ・メリアンヌ 2,000円+税 ISBN978-4-7845-1311-6
社会評論社


 ダンシング・ヴードゥー  ハイチを彩る精霊たち
佐藤文則 2,700円+税 ISBN978-4-7736-2706-0
凱風社


 メコン発 アジアの新時代
薄木秀夫 1,800円+税 ISBN978-4-7736-2814-2
凱風社


 コロンビア内戦  ゲリラと麻薬と殺戮と
伊高浩昭 2,500円+税 ISBN978-4-8460-0376-0
論創社


 メキシコ先住民女性の夜明け
G.ロビラ 2,700円+税 ISBN978-4-8188-1764-7
日本経済評論社


 世界は変えられる TUPが伝えるイラク戦争の「真実」と「非戦」
平和をめざす翻訳者たち/監修 1,800円+税 ISBN978-4-8228-0480-0
七つ森書館


 世界は変えられる2 戦争の被害者って? 加害者って?
平和をめざす翻訳者たち/監修 1,800円+税 ISBN978-4-8228-0489-3
七つ森書館


NR出版会サイト
トップ新刊重版情報既刊書籍リスト加盟社リンクNR-memo書評再録
Copyright(c) NR出版会. All rights reserved.