NR出版会40周年記念連載 書店の店頭から3
祝 NR出版会40周年!
平野義昌さん(海文堂書店/兵庫県神戸市)
40年と言うと私が生まれる前から? いきなりホラですみません。加盟社の入れ替りはあっても、よく続いたものです。関係者の皆さんに対し、勝手に本屋を代表して(最低でも海文堂が)敬意とお礼を申し上げます。
私が本屋に入って30数年、最初は何もわからないまま先輩に指導されて担当しました。先輩は『1968』世代で、訪れる営業マンたちもそのようでした。人権、環境、フェミニズム、アジア……、社会をリードする出版社群でした。よその本屋を見学するなら、弱小零細出版社をどれだけ並べているかを見て来い、と言われたものです。時は流れ、私は本屋からずり落ちてしまい、再び戻った時、やはり先輩の教え通り、弱小零細出版社の本を並べたのでした。また時が経ち、海文堂に移った今も同じことを続けています。
春に事務局Tさんから電話をいただき、その一声に驚きました。まさか「NR」にうら若き女性がおられようとは……。「ノワール」とか「ロワール」とか、美容院の雑誌配達要請ではないかと、何度も確認しました。「あの弱小の集まり?」などなど、ここに書けない失礼を申し上げました。Tさんは「おじさん、バカね」と思ったはずです。私の頭の中の「NR」は、長髪で悪人面の野獣系おっさんです。世代は代わっています。いろいろあって、この原稿になったわけです。
私、大事なことをすっ飛ばしています。7月に神戸で「NR」の皆さんが合宿をされたのでした。そこに、海文堂の酔っ払い3人組+「NR」よりもっと弱小出版社社主+「NR」の著者よりもっとウルサイ著者が加わり、大宴会となりました。その泥酔の最中、この原稿の約束をしたようです。私に書かせるぐらいですから、「NR」取り扱い書店の少なさがわかります。「いしいひさいち」の漫画のごとく、「過激派」ではなく「喜劇派」です。「NR」は捨て身です。
加盟社目録の常備店名簿を見ますと、「兵庫県」では、さすがに全国区J堂各店が連なります。大学生協、わが大先輩M氏のB店、合宿宴会参加のIさんの店も。海文堂も最小セットで一人前に載せてもらっています。繁華街のナショナルチェーンの名はありません。
読者にとって「よい本屋」は、ほしい本があるかどうかで決まります。海文堂で喜んでくれる人もいれば、不満を持つ人もいます。読者の多くはベストセラーを求めているのですから、その人たちにとっては、「何もない本屋」「あんまりない本屋」でありましょう。
先日ある週刊誌のアンケートで、書店員の「面白かった・お客様にも薦めたい」本で、ジャンル別にベスト5を選ぶという企画に回答しました。私が推した本は1冊も入りません。結果として、ベストセラーの集計・確認です。週刊誌がどうのではなく、私が答えることが間違いです。役目を果たせないのです。
町の本屋がどんどんなくなって、巨大書店とチェーン店、それにネット書店で、読者も出版社も困らないというなら、それはそれで結構なことです。「売れる本」しかない本屋の努力は真似できません。「売れる本」も「売れない本」もある超巨大書店の能力を尊敬します。中途半端な規模で一店舗だけの海文堂はどちらにもなれません。海の本の専門店という歴史を先輩たちが築いてくれました。児童書や地元本に力をいれ、オリジナルフェアを毎月展開しています。取次ルートに頼らない本も開拓してきました。地元の古本屋さんと提携して、年数回の古本市を開催し、常設棚設置で、新刊本屋の「古本」も定着しました。「売れる本」だけでは楽しくありません。「売りたい本」があるのです。頭の外も中味も薄くても少しは世の中のことを考えたい、背中が曲がり腰痛でも現実の重みを知りたい、歯がボロボロでも権威に対して文句を言いたいのです。町の本屋が文芸書や教養書を大量に売ることは無理でしょうが、1冊でも2冊でも並べたい、売りたい、売れてほしい。もちろん「NR」だけではなく、多くのヒネクレ小出版社の本も、です。で、読者に自慢します。「こんな本あるでー、知っとう?(神戸ことば)」と。海文堂は「変な人が書いて変な人が作る変な本」が好きなのです。
協力してくれる人たちと共にPR誌・紙、ホームページ、ブログ、手書き通信と、情報を発信しています。外部の媒体でも書かせてもらっています。それでも微力です。身内で喜んでいるだけかもしれません。喜んで、一緒に遊んでくれる人が増えればうれしいです。このたびの合宿で、「NR」の皆さんと深く強い「ご縁」ができたと思っています。
「NRよ、あんたたちの役目は終わっていない!」
「何をエラソーに」
「NR」を「海文堂」に代えて、私のアホ文を終わりにいたします。
NR各社の変な皆さん、変な著者の、変な本をこれからも期待しています。
海文堂書店には今年の7月末に夏合宿で神戸を訪れた際、大人数で押しかけ長居をしてしまいました。時間がたつのも忘れて棚から棚へと足が進む、居心地のよい街の本屋さんです。(事務局・天摩くらら)
(「NR出版会新刊重版情報」2009年12月号掲載)