松浦範子 文・写真

『クルディスタンを訪ねて』

新泉社 2003年3月刊
定価2300円+税 ISBN4-7877-0300-5
A5判変型上製 312頁

●本書刊行に寄せて
 著者のコメント「クルド人のまちを訪ねて」
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/yomimono3.html

新著『クルド人のまち――イランに暮らす国なき民』(2008年)
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/memo0812.html

■■■ 書評から(抄) ■■■

●鎌田慧氏
クルド人のにがい物語が、ゆっくりと体内で発酵したかのように、著者をして文章を書かせるようになる。……家族たちの体験談を聞きながら、一緒に嘆き悲しむ。その語り口が、この本をジャーナリストの客観的な報告とはちがう、私的な記録にしている。……自分だったらどうするだろうか、との問いかけが、危険な取材を重ねさせてきた。カメラをみつめるクルド人たちの眼の輝きが、著者への期待をあらわしている。
(「週刊朝日」03年5月16日号)

●池澤夏樹氏
この旅人は本当に危険な思いを重ねながら旅をして、しかもそれを何度となく繰り返す。それだけの明確な意図を持って旅に出る。そして、その意図はこの本を読む者にまちがいなく伝わる。これは旅の本であると同時に、出色のルポルタージュである。
(「週刊文春」03年6月19日号)
http://www.impala.jp/bookclub/html/dinfo/10117505.html

●岡真理氏
本書を読んで、メディアで語られる「クルディスタン」という言葉が、私にはそれまでとはまったく違ったものとして―痛みをともなう響きとして―聴こえるようになった。……本書を読み終わってからもう一度、頁を繰り、収められた写真を見る。その眼差しの一つひとつが、彼ら彼女らが生きる固有の生の現実を私に語りかけてくる。戦争が終わっても、私はクルディスタンを忘れないだろう。
(「インパクション」135号、03年4月)
http://www.jca.apc.org/~impact/magazine/impaction.html

●中川喜与志氏
軍への連行・取り調べの描写には思わず固唾をのむ。/本書はクルド人とクルディスタンに関する非常に良質のフィールドノートであり、同時に久しぶりの「ニュージャーナリズム」と呼ぶにふさわしい迫真のルポルタージュ作品でもある。
(「京都新聞」03年4月20日)

●勝又郁子氏
著者の写真家としての目線は、クルディスタンの壮大な自然や生活風景から人々の心の襞にまで入り込んでいく。……読者はいつのまにか著者と一緒に迷い、憤り、人々に慰められ、逆に慰めの言葉を失っている自分に気づくことだろう。
(「週刊読書人」03年5月2日)

●木村倫幸氏
本書をひもとくことで、われわれは、近代国民国家や民族自決の本質についての再検討に否応なく向き合わされる。そしてこのことは同時に、われわれに、日本における少数民族の問題、国家権力の問題をどう考えていくのかという姿勢、視点を迫ることになる。/もとよりこの問題についての即効的な答はないが、しかし著者の視点の持つ意味は大きい。本書にはまた多くの写真が収められているが、破壊された町並みの悲しみとともに、その中でもなお生活に立ち向かっている大家族や民衆の集まりの写真、中でも子供たちの笑顔にクルドの人々の将来を見たいと思う。
(季報「唯物論研究」85号、03年8月)

■■■ 2003年度「今年の3冊」 ■■■

●鎌田慧氏
クルド人にたいする柔らかなこころと彼らを迫害するトルコ兵にたいする冷たい視点がよくあらわれている。そこに至る経過もよくわかる描写になっている。
  (「リテレール別冊 ことし読む本 いち押しガイド」)

●池澤夏樹氏
抑圧のもとにある人々の矜持と、抑圧する側の倫理観の劣化を正確に書いている。困難な旅の記録としても注目に値する。
  (「毎日新聞」03年12月21日)

●川本三郎氏
日本人にはあまり知られていないクルド人の土地に入り、その歴史と現在を愛情をもって紹介している。中近東を知る手がかりになる。
  (「北海道新聞」03年12月21日)

■■■ 記事、インタビュー(抄) ■■■

●「北海道新聞」03年4月13日(「西日本新聞」03年5月25日)
民族の悲劇。一言で言えば、そうだ。でも、この本からは、迷いながら、懸命に生きる一人ひとりの姿が浮かぶ。同じクルド人でも、真っ向から差別に歯向かう人もいれば、やり過ごす人もいる。一筋縄ではいかない問題の根深さが、人ごとではなく胸に迫る。(東京社会部 栗山麻衣記者)
http://www5.hokkaido-np.co.jp/books/20030413/visit.html

●「読売新聞」03年4月13日
周囲に迷惑が及ぶたびに、自分は <親切なクルド人たちに災難を振りまいているだけではないか> と悩んだ。が「ありのままを伝えて」という彼らの声に、本を書こうと覚悟を決める。……まだ「ジャーナリスト」は名乗っていない新進フォトグラファーの言葉に「報道」の原点を垣間見た。

●「毎日新聞」03年4月20日
危険な土地に著者は果敢に足を踏み入れる。クルド人に味方するのかと軍にピストルを突きつけられたこともある。それでも「私たちのことを知ろうとして有難う」というクルド人の声に応えるためにひるむことはない。その行動力、情熱に頭が下がる。
http://www.mainichi.co.jp/life/dokusho/2003/0420/10.html
〔表紙カバーの〕写真は春先のトルコのワン近郊の村で羊を追う少女。松浦さんが一人で歩いていた時、たまたま出会った。各地で人々の生活が破壊されている中、「このような平和な風景を誰にも汚させたくない」という反戦の気持ちを込め、この写真を表紙に選んだという。装丁は藤原邦久さん。
http://www.mainichi.co.jp/life/dokusho/2003/0420/cover.html

●「東京新聞」「中日新聞」03年5月11日
偏見や人権無視のただ中を生きるクルド人民との温かい交流を描いた、第一級の感動的な記録である。日本人写真家としての自省も立派で、収められた六十数葉の写真も素晴らしい。

●「日本経済新聞」03年3月23日
音大出身者らしく、音楽好きのクルド人たちが車座の中で披露する美声にも耳を傾け、強い郷愁の念を感じ取っている。細やかな感性と、彼らと同じ目線に立った姿勢が心地よい。

●ジュンク堂書店発行「書標」03年7月号
著者による彼らの生活に密着した旅の記録によって、民族性だけでなく、クルド人問題の厳しい現実が刻銘に窺える。単一民族国家を謳うトルコ政府により「山岳トルコ人」と呼ばれて民族としての存在を否定され、あらゆる文化活動も、表現・言論の自由も禁止されてきたクルド人たち。そんな扱いをされる民族が未だ存在するという現実を、安全で帰れる国のある人々にもっと知って欲しいという彼らの声が聞こえるような気がする。/単なる紀行文に終わらず、読者が国際社会の一員であるということを再認識させ、「人権」という視点から、「民族」と「国家」のあり方を改めて考えさせられる作品である。
http://www.junkudo.co.jp/syohyo7syohyo0307.htm
(ジュンク堂書店トップページは、http://www.junkudo.co.jp/

●「ふぇみん」03年4月5日号
なんの後ろ盾もない彼女が、1人で危険な地域にバスに揺られて入っていく。それだからこそクルドの人たちが彼女を迎え入れ、友人として本音で語ってくれるのだろう。写真の中の女性の柔らかな視線が著者と彼らとの関わりを表している。

●「悠」03年7月号(「日々の暮らしから『クルド人の“誇り”』を撮る」)
「ゲリラや迫害ではなく、この“美しい土地”を見てほしい。だって僕たちの心の原点はこの場所にあるのだから」という言葉に、「私にできることは、人々の暮らしを撮ること」に気付いたという。……「私たちと同じ人間が、爆撃されたり銃を向けられているとしたら、テレビの向こうの世界として片づけられないのではないでしょうか」。

●「ahead」03年4月号
生まれ育った村を追われ、肉親を殺された者が紡ぎ出す「和解」という言葉の切実な響きに圧倒される。名もなき日常から立ち現れる「平和」の尊さを改めて深く考えさせられる一冊。

●「アサート」305号、03年4月
http://www.assert.jp/data/2003/30504.htm

*上記のほか、「週刊金曜日」03年3月21日号、「出版ニュース」03年4月下旬号、「聖教新聞」03年8月17日号などにも、書評やインタビューが掲載されました。

■■■ 読者カードより ■■■

●神奈川県、29歳女性
著者の勇気に感動すると共に、正直な戸惑いの気持ちに共振し、読後こちらも戸惑いっぱなしです。……今後とも頑張ってほしいと心から思います。

●愛知県、24歳男性
一日で一気に興奮しながら読ませて頂きました。松浦範子さんの正直で飾り気のない文章はかえって自分の感情を素直に重ねることができました。知らなくてはいけないことが山ほどあるし、やりたいこと、やらなくてはいけないことも同じくらいあるけど、自分の責任で選んでいきたいです。

●東京都、27歳女性
とても素直な文章で、でもとても力強くて、真摯な松浦さんの人柄を思いました。私も似たような経験をもっているのに、ここまで強く、深く考えられなかった。出逢ってうれしい本でした。そして考えさせられています、今。

●東京都、71歳男性
すばらしいの一言。30代の女性が一人で危険もめげず旅する勇敢さと美しさ。日本の政治家に欠けている感覚である。

●兵庫県、69歳女性
大変興味深く読みました。クルド人、とくにトルコに居住するクルド人の過去から現在にいたる苦悩や闘いについては、本書でしか窺い知ることができなかかったため、戦争や民族の争いについて深く考えさせられた。

●鹿児島県、40歳男性
充実した濃い内容で、説得力ある、読みごたえのある素晴らしい著作でした。

●京都府、37歳女性
クルド人たちが置かれている状況に対してやるせない思いを抱き、その状況を前に「写真を撮る」という形で彼らに関与しようと、逡巡なさった末に決意され、実行されておられるところに深く感銘を受けました。また、トルコ人とクルド人が共同で活動している姿に希望を見出されておられる件がありましたが、私もまったく同感です。

●東京都、男性
日本人の異文化理解にきわめて重要なテキストと思われました。

●兵庫県、女性
クルディスタンについて初めて読み、生活や背負ってきた困難について学ぶことができました。写真もとてもきれいだと思いました。

●山梨県、69歳女性
パキスタンに友人が居ますので、アフガン、クルディスタン等とても興味があり、よくわかってうれしかったです。どうしてみんな理解しあわないのか不思議です。みんな一人ひとりは良い人なのに。

●埼玉県、69歳男性
人々の苦しみと哀しみが淡々と描かれていて、心に沁み入る。

●東京都、76歳女性
いつか私も、クルディスタンを訪ねて行きたいと思いました。松浦範子さんに感謝! よろしく

■■■ 書店員さんの声 ■■■

●書泉 甲斐裕さん
この本と出逢って、クルドのことを肌で感じられるようになりました。

●岩瀬書店 石川直美さん
豊かな文化を持つクルド人がなぜ理不尽な目にあわなければならないのか…。重い問題ですが、無垢な表情をとらえた数々の写真と著者の透徹した視線による文章がさわやかでさえあります。
(「こおりやま情報」ホームページより。http://www.koriyama.co.jp/book/


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